My Favorite 塔9月号

月集、新樹集、作品1、作品2、若葉集からお気に入りを。

<GOLD Favorite>
ほかほかのごはんにたんとしらすのせ今日も地獄をこしらえている   木村啓子
樹の鬱と風の鬱との遭ふあたり斜めに截りてつばくらめ飛ぶ   岡部史
隣室の号泣背に聞きながら静かにドアを閉め退院す   若松忠雄


<SILVER Favorite>
泥臭さがたりない気のして作り足す菓子鉢いっぱいの金平牛蒡   白水麻衣
ひしめける樹樹の響きに打ち消され行き処失う私のことば   秋津霧
みな同じ寝巻きを着ている病棟に入れば私服は健康な人   片山楓子
堪えてもまだ溢れだすものあらば紫陽花ぬらす雨に流せよ   沼寛子
トラックに積まれてゆくよ古ピアノ臓器のように鍵盤が鳴る   柳詰美代子
母さんがわたしを忘れゆくやうに風が吹くなり楓をゆらして   落合けい子
紛れなく満ちては欠ける家族はも雲間にふいの月がみえたり   国森久美子
樹木葬あこがれつのりいつかわがたどりつくべき樹木のさやぎ   みやちせつこ

<BRONZE Favorite>
地下鉄の中で突然泣き出した私が揺らす微妙な波紋   空色ぴりか
百匹の羊を数える何度目か後から来たりていびきをかくな   村松建彦
山は女。ひとたびならぬ流産を経つつひとつの麓のために   なみの亜子
シガレットケースをふかく忍ばせて世論の側にゐるふりをせり   千名民時
かろやかに古稀のミシンは今も動きとほきかの日の子等のさざめき   島居妙子
ひといきにものを言ふ呼吸」それはもう青空を吐くやうに愉しい   毛利さち子
信仰を持たざる者が祈りたくなるときのために月は輝く   岡本幸緒
踏み外し落ちてゆく間のゆるやかさ空の青さを目で受け止める   吉川敬子
睫毛はさむ度に小さく口あけて車中に少女の羽化は進めり   伊地知順一
まだ生きているので死んだら死の世界お話しますと言う寂聴さん   吉岡のぶゑ
夕焼けは太陽が送るさよならのしるしと思う岬に立ちて   真隅素子
流木が海辺に流れ着くようにまとまりもなく夕べに着きぬ   黒沼幽子
僕がまだ時計を読めなかったころ時はゆっくり流れていたよ   山上秋恵
こんな広さの空を私は欲しくない樹々根こそぎのさら地の上の   山梨寿子
ゆつくりと花屋の前に立ち止まり心充たして買はずに帰る   大畑敏子
初なりの胡瓜摘み取る指先にけふの会議の不快もちつつ   進藤サダ子
わが妻はふぐにあらねど膨らんで腹立たしきこと多き日々らし   新井蜜
姑の「孫コは明治天皇似」褒める声ありラッパーの息子を   今井由美子
自転車が賢く走るゆうぐれのまちに戻りぬ傘を垂らして   秋場葉子
注文が食券制というだけで松屋を愛す無言でもよい  井上雅史
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by 31life | 2007-09-15 14:41 | My Favorite  

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