塔 11月号 掲載短歌

西千葉のBar Reverseの片隅で君から借りたZIPPOのにおい   飯村みすず

しずけき君のたったひとりの親友と云われる我は幸せならん

君たちをコントロール出来ぬと云う おまえなんぞにされてたまるか

蛇口から垂れる雫が止まらない主婦とう暗室の中にしゃがみぬ

変わったと云われることは悪くないそれがタトゥーの友からであれば
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# by 31life | 2007-11-15 15:34 | 掲載短歌  

短歌研究11月号

短歌研究詠草
<佳作>石川不二子選

僕たちはいったいどこまで行けるだろう廃工場を覆う夕焼け   飯村みすず

君の心もらうようだよ袖のすそ伸ばし受けとる缶珈琲は

ようやっと今日が昨日になった朝朝顔の葉から雫こぼれる

明け初める空に温まり息をすう今日も人間でありますように
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# by 31life | 2007-10-26 00:44 | 掲載短歌  

短歌11月号

<佳作>三枝昂之選

ぺっとりと車窓にひたいをつけおれば園児の笑顔が流れてゆけり   飯村みすず

<佳作>沖ななも選

のっぺりと薄汚れていく僕の街ただ逢いたくてスピード上げる 
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# by 31life | 2007-10-25 00:39 | 掲載短歌  

My Favorite 塔10月号後編。

若葉集、作品2(栗木京子選、真中朋久選)からお気に入りを。

☆☆☆
夜にのむ水音耳の奥にきく若き日々など還らずともよし   塩谷登
みなづきの臓器軋みていたりけり曇天に聴く黒人霊歌   須磨岡繁

☆☆
あま辛く金目を煮たり雨の日は玄関までも醤油が匂う   山口絹子
母おきて帰るほかなきその朝にさらさらと研ぐ一人(いちにん)の米   数又みはる
裏口にひよつこり母は戻らむか手押し車に菜の花のせて   大川直子
大根を厚めに剥きてゐるうちに大袈裟になりゆく怒りあり   山地あい子
幼な子 がいやだいやだと泣きわめくそうだな俺もまったくいやだ   相原かろ
叱る子のいないキッチンなで肩のらっきょうむいて瓶につめゆく   黒瀬圭子
 

すべり台の裏を覗けば楷書にて百姓一揆と書かれていたり   乙部真実
まるでここに人生があるかのように スポットライトに佇むピアノ   黒沢優
ダンボールの箱で寝ている足出して人の欠片のようなりあわれ   明石森太
揺らめけど蝶にはなれぬコスモスが風のかたちをしきりに見せて   石原安藝子
かなしみのあふれくるときミント摘み抱へておりぬ眠くなるまで   ほうり真子
いちどきりキヤツチボールをしたときの原つぱにまだ父は佇(た)ちをり   久保茂樹
アンネ・フランク遺品発見報じゐし画面変わりぬ為替相場に   原夏子
もうだれもテストをしてくれない秋にものをおぼえることはさびしい   上澄眠
散り急ぐ花仰ぎつつ父さんより長生きしてと娘(こ)は不意にいふ   船曳弘子
洗う手を拒むかに固き石の上に刻まれし名の生前を知らず   三浦こうこ
楽章と楽章の間に拍手起き熱きものに触れたごとく消ゆ   吉澤ゆう子
独りには独りのよさがあるものの独りのよさは独りじゃわからず   美野冬吉
震度六示すテロップに右肩切られながらもタモリは笑う   沼尻つた子
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# by 31life | 2007-10-17 15:55 | My Favorite  

塔 10月号  掲載短歌

一度だけ父が「イタイ」と呟くのを聞いた気がする死ぬ二週間前  飯村みすず

「子は生きてゐることが親孝行だ」父は優しい象の目をして

生きてゐる人間のはうが恐いのに死体はどうして恐いのだらう

亡父(ちち)の横で「昴」「群青」口ずさめば妹弟(きやうだい)までも唄へる必然

車中にて父に激しく叱られき夢から覚めて涙止まらず

盛岡を捨てたと父は云つたけど私が盛岡に捨てられたのだ

出産を待たずに逝きし父よ 今 君が初孫ここに掲げむ
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# by 31life | 2007-10-15 15:22 | 掲載短歌  

塔 9月号 掲載短歌

洗濯機のスイッチ入れればさり気なく夫はテレビのボリューム上げる  飯村みすず

字の書けぬ息子はなぜか家中のえんぴつ集め箱に隠せり

そんなにも涙を流して泣きをればママは溺れ死んでしまふよ

泣きつかれ眠れよ眠れみどりごよ明日は一ミリ大きくならむ
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# by 31life | 2007-09-15 15:30 | 掲載短歌  

My Favorite 塔9月号

月集、新樹集、作品1、作品2、若葉集からお気に入りを。

<GOLD Favorite>
ほかほかのごはんにたんとしらすのせ今日も地獄をこしらえている   木村啓子
樹の鬱と風の鬱との遭ふあたり斜めに截りてつばくらめ飛ぶ   岡部史
隣室の号泣背に聞きながら静かにドアを閉め退院す   若松忠雄


<SILVER Favorite>
泥臭さがたりない気のして作り足す菓子鉢いっぱいの金平牛蒡   白水麻衣
ひしめける樹樹の響きに打ち消され行き処失う私のことば   秋津霧
みな同じ寝巻きを着ている病棟に入れば私服は健康な人   片山楓子
堪えてもまだ溢れだすものあらば紫陽花ぬらす雨に流せよ   沼寛子
トラックに積まれてゆくよ古ピアノ臓器のように鍵盤が鳴る   柳詰美代子
母さんがわたしを忘れゆくやうに風が吹くなり楓をゆらして   落合けい子
紛れなく満ちては欠ける家族はも雲間にふいの月がみえたり   国森久美子
樹木葬あこがれつのりいつかわがたどりつくべき樹木のさやぎ   みやちせつこ

<BRONZE Favorite>
地下鉄の中で突然泣き出した私が揺らす微妙な波紋   空色ぴりか
百匹の羊を数える何度目か後から来たりていびきをかくな   村松建彦
山は女。ひとたびならぬ流産を経つつひとつの麓のために   なみの亜子
シガレットケースをふかく忍ばせて世論の側にゐるふりをせり   千名民時
かろやかに古稀のミシンは今も動きとほきかの日の子等のさざめき   島居妙子
ひといきにものを言ふ呼吸」それはもう青空を吐くやうに愉しい   毛利さち子
信仰を持たざる者が祈りたくなるときのために月は輝く   岡本幸緒
踏み外し落ちてゆく間のゆるやかさ空の青さを目で受け止める   吉川敬子
睫毛はさむ度に小さく口あけて車中に少女の羽化は進めり   伊地知順一
まだ生きているので死んだら死の世界お話しますと言う寂聴さん   吉岡のぶゑ
夕焼けは太陽が送るさよならのしるしと思う岬に立ちて   真隅素子
流木が海辺に流れ着くようにまとまりもなく夕べに着きぬ   黒沼幽子
僕がまだ時計を読めなかったころ時はゆっくり流れていたよ   山上秋恵
こんな広さの空を私は欲しくない樹々根こそぎのさら地の上の   山梨寿子
ゆつくりと花屋の前に立ち止まり心充たして買はずに帰る   大畑敏子
初なりの胡瓜摘み取る指先にけふの会議の不快もちつつ   進藤サダ子
わが妻はふぐにあらねど膨らんで腹立たしきこと多き日々らし   新井蜜
姑の「孫コは明治天皇似」褒める声ありラッパーの息子を   今井由美子
自転車が賢く走るゆうぐれのまちに戻りぬ傘を垂らして   秋場葉子
注文が食券制というだけで松屋を愛す無言でもよい  井上雅史
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# by 31life | 2007-09-15 14:41 | My Favorite  

短歌 9月号

公募短歌館 
 
【秀逸】伊藤一彦選
飲み会に誰とも語らず佇めばどこにも私がいないいないいない   飯村みすず

【佳作】松平盟子選
時間切れ、「12」のところで秒針が我の背中に斬りかかりおり
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# by 31life | 2007-08-26 22:36 | 掲載短歌  

短歌研究 9月号

短歌研究詠章 高野公彦選

【準特選】
錆びつきし自転車乗ればどこからか淋しき音の静かに出でぬ

誰もゐぬ居間に座りて淋しさと自由のあはひに背骨を鳴らす

両足を歪んだ河に沈めればみづ淋淋と足に巻きつく

淋しきは流れ消ゆること今日もまたタンクの右横レバーを捻る

ひたひつけ外の淋雨を眺むれば小さな苗木はしなだれ揺れる  飯村みすず

●選後感想(高野公彦評)
「淋」という漢字を自ら題として読んだ五首。
全体を流れる透明な空気に、作者の孤独が溶け込んでいる。
「淋しさと自由のあはいに背骨を鳴らす」「みづ淋淋と足に巻きつく」
など身体感覚を詠む事で、歌に深みが出た。

新人賞予選通過作品

いきている証欲しくば天睨み恨めしき色をつけよ蒲公英

我が知らぬ世界を昨日照らしいし太陽は我と再会したり  飯村みすず
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# by 31life | 2007-08-25 22:24 | 掲載短歌  

My Favorite 塔8月号

月集、作品1、作品2、若葉集、新樹集より、お気に入りを。

<GOLD Favorite>
目頭に涙ひとつぶ落とししとき母はわが手をつよく握りぬ   中島扶美恵
ひぐらしの声を最後の記憶とし父は逝きたりぐらりと揺れて   数又みはる
社章鋭(と)く陽に光らせて群れてゐるあはれ日本の男らの春   岡部史

<SILVER Favorite>
死ぬるとき前髪を探るしぐさすと翌日聞いて悲しかりしよ   浜崎純江
シートベルトさえしていれば今も在る人なり名刺の角を折る   林田幸子
その親に殺められたる子供らは神が親より取り上げしならん   荒井直子
甘えたる口調の車内アナウンスながれてどつと疲れを覚ゆ   後藤悦良
エプロンをはずせばわが身はゆっくりとそこにかしこに紛れてゆけり   遠田有里子
雨の日の古書店の棚しっとりとサガンの恋も黴臭くあり   黒瀬圭子
あまりにも小さき猫のないてゐるひとつひとつの歯もないてをり   大橋智恵子
同じ数眠りと目覚め重ねきて目覚めが最後少なかり一度   筑井悦子

<BRONZE Favorite>
遺影みなモノクロなるも妹のこの服の色私は知っている   津野多代
ひとさじのおかゆ飲むたびおさなごはこの世のひとの声になりゆく   川﨑香南子
千円札のみどりの色が生えてくる能登行きのカンパの空壜に   梶原さい子
姓名も体も心も気に入らぬなすすべもなき鏡中の闇   豊田厚二
子を抱きて眠いる娘のまなじりのうすく翳りて痩せているなり   土肥朋子
たわやすくごめん、ごめんと言うようになりし母なりゆえに手ごわし   竹田千寿
面接で人が好きかと尋ねられつるつる嘘をつく人になる   相原かろ
蛍って何だかただの虫だねとやはり翌朝あいつは言った   乙部真実
ヒール少しある靴穿いてみたくなり売場に行きてそっと触れたり   早川洋子
木々は萌え門出の四月われは娘に花を手向ける身とはなりたり   福政ますみ
英単語柱に貼ってお祭りのように試験は通り過ぎたり   藤田千鶴
感情は殺すことなくゆったりと君の腕にしめられてゆく   国森久美子
自己評価があなたは低いと指摘され汝の評価に縛らるるを知る   菊沢宏美
この僕を一体誰が見るのだろう防犯カメラに向かってピース   五宝久充
歳月が俺を罵りやまぬから向日葵の種ひとつぶ握る  鈴木俊春
わたくしが迷子であるアナウンス流れ二才の息子は待てり   秋野道子
ある日ぽとり椿のやうに落ちるのもいいかもしれぬ嫌はれぬうち   船曳弘子
胴体を編み上げ走る血管が青く浮き出す薄き皮膚から   中山悦子
この児らと生きむと決めし夏の日の光を掴みそこねしわれか   伊藤恵理子
たこやきを出店で買ってひとりなり端っこでもいい見よう桜を   徳重龍弥
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# by 31life | 2007-08-18 21:37 | My Favorite