タグ:My Favorite 「塔」 ( 7 ) タグの人気記事

 

My Favorite 塔 8月号 (作品2 池本一郎 選)

 塔 8月号 (作品2 池本一郎 選)からお気に入りを。


花酔ひの闇はひととき濃くなりぬブレスレットはひざにこぼれて   澄田広枝

惚けたらきっと私は本屋にて帯書(おびがき)読んでいるから 捜して   津野多代

お姉ちゃんになったのだからなどと言うな二児の父になれば子は吾に告ぐ   中野満代

帰省する子にふるさとは美しくあれ中央通りの躑躅咲き初む   明田光子

子によれば神奈川県はペガサスで茨城県はおっぱいに似る   尾崎智美

いくつもの記念時計に囲まれて書斎の中にわれはいるなり   鈴木啓三

差出人は父から兄に変わりたる小包届く季節のはじめに   沢田麻佐子

錯覚のままに過ぎ来し二年ほどを生き生きとしていたと言われき   西川啓子

人身事故のアナウンスあり一日が終わらんとする夜の車内に   みやちせつこ

思ひきりねぢりて捨てしビニール袋逆らふやうに徐々に籠いづ   関山正雄
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by 31life | 2008-08-20 19:04 | My Favorite  

My Favorite 塔 5月号(作品2花山多佳子選)

作品2 花山多佳子 選欄 より

手を叩きながら媼のうたう唄はいつもつづく感じに終わる   保村たまき

寒空にアキレス腱を伸ばすとき少女はなべて怖ろしくあり   金田光世

東京は大都市にして森のようビルの狭間で迷える二人   青木初枝

頭から酒かけられるほど酒好きな俺ではないと墓なる父は   赤梨和則

オカリナは売られてをりぬ天上の青よりうすい青い色して   朝山桃花

独り居の女性が飼える黒き犬呼べば尾を振るいとおざなりに   稲垣保子

食卓のトマトが鬼の心臓に見ゆると君に言ひてさびしき   苅谷君代

賛も否も表明できぬ会議にてハトサブレーを小さく割りおり   久保田和子

着替へたる背広のままで椅子深く眠る客あり胸に手を置き   黑田英雄

次の世も女でありたし望むのは何か一つの才能持ちて   越川幸子

カーテンを全て引き開け父は座す 九十八歳を居眠らぬため   斎藤賢悦

降るときも消えゆくときも音のなく雪の白妙むかしも今も   西崎信子

四月から確実に変わる生活の不安要素に絵文字を付ける   水口典子

参列者の多少によりて人の価値計る友より離れて立ちぬ   邑岡多満恵

山をおりて茶房にケーキを注文す恋人を呼ぶように「ポンヌフ」   山下裕美

正座して犬が信号待つゆえに赤信号を今朝は渡らぬ   関野裕之
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by 31life | 2008-05-20 16:47 | My Favorite  

My Favorite 塔10月号後編。

若葉集、作品2(栗木京子選、真中朋久選)からお気に入りを。

☆☆☆
夜にのむ水音耳の奥にきく若き日々など還らずともよし   塩谷登
みなづきの臓器軋みていたりけり曇天に聴く黒人霊歌   須磨岡繁

☆☆
あま辛く金目を煮たり雨の日は玄関までも醤油が匂う   山口絹子
母おきて帰るほかなきその朝にさらさらと研ぐ一人(いちにん)の米   数又みはる
裏口にひよつこり母は戻らむか手押し車に菜の花のせて   大川直子
大根を厚めに剥きてゐるうちに大袈裟になりゆく怒りあり   山地あい子
幼な子 がいやだいやだと泣きわめくそうだな俺もまったくいやだ   相原かろ
叱る子のいないキッチンなで肩のらっきょうむいて瓶につめゆく   黒瀬圭子
 

すべり台の裏を覗けば楷書にて百姓一揆と書かれていたり   乙部真実
まるでここに人生があるかのように スポットライトに佇むピアノ   黒沢優
ダンボールの箱で寝ている足出して人の欠片のようなりあわれ   明石森太
揺らめけど蝶にはなれぬコスモスが風のかたちをしきりに見せて   石原安藝子
かなしみのあふれくるときミント摘み抱へておりぬ眠くなるまで   ほうり真子
いちどきりキヤツチボールをしたときの原つぱにまだ父は佇(た)ちをり   久保茂樹
アンネ・フランク遺品発見報じゐし画面変わりぬ為替相場に   原夏子
もうだれもテストをしてくれない秋にものをおぼえることはさびしい   上澄眠
散り急ぐ花仰ぎつつ父さんより長生きしてと娘(こ)は不意にいふ   船曳弘子
洗う手を拒むかに固き石の上に刻まれし名の生前を知らず   三浦こうこ
楽章と楽章の間に拍手起き熱きものに触れたごとく消ゆ   吉澤ゆう子
独りには独りのよさがあるものの独りのよさは独りじゃわからず   美野冬吉
震度六示すテロップに右肩切られながらもタモリは笑う   沼尻つた子
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by 31life | 2007-10-17 15:55 | My Favorite  

My Favorite 塔9月号

月集、新樹集、作品1、作品2、若葉集からお気に入りを。

<GOLD Favorite>
ほかほかのごはんにたんとしらすのせ今日も地獄をこしらえている   木村啓子
樹の鬱と風の鬱との遭ふあたり斜めに截りてつばくらめ飛ぶ   岡部史
隣室の号泣背に聞きながら静かにドアを閉め退院す   若松忠雄


<SILVER Favorite>
泥臭さがたりない気のして作り足す菓子鉢いっぱいの金平牛蒡   白水麻衣
ひしめける樹樹の響きに打ち消され行き処失う私のことば   秋津霧
みな同じ寝巻きを着ている病棟に入れば私服は健康な人   片山楓子
堪えてもまだ溢れだすものあらば紫陽花ぬらす雨に流せよ   沼寛子
トラックに積まれてゆくよ古ピアノ臓器のように鍵盤が鳴る   柳詰美代子
母さんがわたしを忘れゆくやうに風が吹くなり楓をゆらして   落合けい子
紛れなく満ちては欠ける家族はも雲間にふいの月がみえたり   国森久美子
樹木葬あこがれつのりいつかわがたどりつくべき樹木のさやぎ   みやちせつこ

<BRONZE Favorite>
地下鉄の中で突然泣き出した私が揺らす微妙な波紋   空色ぴりか
百匹の羊を数える何度目か後から来たりていびきをかくな   村松建彦
山は女。ひとたびならぬ流産を経つつひとつの麓のために   なみの亜子
シガレットケースをふかく忍ばせて世論の側にゐるふりをせり   千名民時
かろやかに古稀のミシンは今も動きとほきかの日の子等のさざめき   島居妙子
ひといきにものを言ふ呼吸」それはもう青空を吐くやうに愉しい   毛利さち子
信仰を持たざる者が祈りたくなるときのために月は輝く   岡本幸緒
踏み外し落ちてゆく間のゆるやかさ空の青さを目で受け止める   吉川敬子
睫毛はさむ度に小さく口あけて車中に少女の羽化は進めり   伊地知順一
まだ生きているので死んだら死の世界お話しますと言う寂聴さん   吉岡のぶゑ
夕焼けは太陽が送るさよならのしるしと思う岬に立ちて   真隅素子
流木が海辺に流れ着くようにまとまりもなく夕べに着きぬ   黒沼幽子
僕がまだ時計を読めなかったころ時はゆっくり流れていたよ   山上秋恵
こんな広さの空を私は欲しくない樹々根こそぎのさら地の上の   山梨寿子
ゆつくりと花屋の前に立ち止まり心充たして買はずに帰る   大畑敏子
初なりの胡瓜摘み取る指先にけふの会議の不快もちつつ   進藤サダ子
わが妻はふぐにあらねど膨らんで腹立たしきこと多き日々らし   新井蜜
姑の「孫コは明治天皇似」褒める声ありラッパーの息子を   今井由美子
自転車が賢く走るゆうぐれのまちに戻りぬ傘を垂らして   秋場葉子
注文が食券制というだけで松屋を愛す無言でもよい  井上雅史
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by 31life | 2007-09-15 14:41 | My Favorite  

My Favorite 塔8月号

月集、作品1、作品2、若葉集、新樹集より、お気に入りを。

<GOLD Favorite>
目頭に涙ひとつぶ落とししとき母はわが手をつよく握りぬ   中島扶美恵
ひぐらしの声を最後の記憶とし父は逝きたりぐらりと揺れて   数又みはる
社章鋭(と)く陽に光らせて群れてゐるあはれ日本の男らの春   岡部史

<SILVER Favorite>
死ぬるとき前髪を探るしぐさすと翌日聞いて悲しかりしよ   浜崎純江
シートベルトさえしていれば今も在る人なり名刺の角を折る   林田幸子
その親に殺められたる子供らは神が親より取り上げしならん   荒井直子
甘えたる口調の車内アナウンスながれてどつと疲れを覚ゆ   後藤悦良
エプロンをはずせばわが身はゆっくりとそこにかしこに紛れてゆけり   遠田有里子
雨の日の古書店の棚しっとりとサガンの恋も黴臭くあり   黒瀬圭子
あまりにも小さき猫のないてゐるひとつひとつの歯もないてをり   大橋智恵子
同じ数眠りと目覚め重ねきて目覚めが最後少なかり一度   筑井悦子

<BRONZE Favorite>
遺影みなモノクロなるも妹のこの服の色私は知っている   津野多代
ひとさじのおかゆ飲むたびおさなごはこの世のひとの声になりゆく   川﨑香南子
千円札のみどりの色が生えてくる能登行きのカンパの空壜に   梶原さい子
姓名も体も心も気に入らぬなすすべもなき鏡中の闇   豊田厚二
子を抱きて眠いる娘のまなじりのうすく翳りて痩せているなり   土肥朋子
たわやすくごめん、ごめんと言うようになりし母なりゆえに手ごわし   竹田千寿
面接で人が好きかと尋ねられつるつる嘘をつく人になる   相原かろ
蛍って何だかただの虫だねとやはり翌朝あいつは言った   乙部真実
ヒール少しある靴穿いてみたくなり売場に行きてそっと触れたり   早川洋子
木々は萌え門出の四月われは娘に花を手向ける身とはなりたり   福政ますみ
英単語柱に貼ってお祭りのように試験は通り過ぎたり   藤田千鶴
感情は殺すことなくゆったりと君の腕にしめられてゆく   国森久美子
自己評価があなたは低いと指摘され汝の評価に縛らるるを知る   菊沢宏美
この僕を一体誰が見るのだろう防犯カメラに向かってピース   五宝久充
歳月が俺を罵りやまぬから向日葵の種ひとつぶ握る  鈴木俊春
わたくしが迷子であるアナウンス流れ二才の息子は待てり   秋野道子
ある日ぽとり椿のやうに落ちるのもいいかもしれぬ嫌はれぬうち   船曳弘子
胴体を編み上げ走る血管が青く浮き出す薄き皮膚から   中山悦子
この児らと生きむと決めし夏の日の光を掴みそこねしわれか   伊藤恵理子
たこやきを出店で買ってひとりなり端っこでもいい見よう桜を   徳重龍弥
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by 31life | 2007-08-18 21:37 | My Favorite  

My Favorite 塔7月号

作品1、作品2、若葉集より。

<GOLD Favorite>
両指をそつと組み合はするごとく祈れわたしの貧しきあばら  梶原さい子
靖国も愛国も知らずみづみづと花ひらきたり基準のさくら  豊島ゆきこ
そのうへの苺かならず甘くあれ燭をふき消すをさな子のため  久保茂樹

<SILVER Favorite>
星空のやうでありたし泣き寝せる子を抱きゐるわが懐の  千名民時
新聞を綺麗にたたむこの人は丁寧ならむ人捨つる日も  秋場葉子
コーヒーに澱んだシュガーは戦争で潤う利益のごとくに甘き  北辻千展
ふり向けば父母はまだ手を振りておりまっすぐなまっすぐな道なり  邑岡多満恵
幽霊が辺りを漂うビルの群疲れた女が昼食を食む  油野勤
検査値の結果の良くて病院へ病人顔を置いて帰りぬ  西村清子
春深みカップに注ぐ牛乳も彫刻のごとき陰影を持つ  本田光湖
カスタネットたたきたくなる春の夕父母居らず猫と暮らして  田中律子

<BRONZE Favorite>
夜と昼を逆さまに生きて青年の未来に咲かす花のいろ何  かざまきみこ
妻を亡くしし人十日経て出でて来ぬ許されし休暇は十日であれば  荒井直子
子を思う親の気持ちはそのむかし目玉おやじを生みにけるかも  松村正直
豆電球の首のあたりに溶接のあとあり首は大事なところ  深尾和彦
本名というも一つの記号にて診察券を揃えて仕舞う  川本千栄
さりげなく眼鏡外してレンズ拭く詰まらぬ話聞かされていて  山本勉
鳴り止みし電話の音をそこここに浮かべてゆつくり暮れてゆく部屋  筑井悦子
死ぬ前にわれの後ろに誰ゐると父は言ひしか頭持ち上げ  北神照美
気に入ったヤカン一つが見つからぬこだわり捨てれば生きやすかろう  あかり
いらいらと子を打ちたるも愛情とくらい記憶の六畳の闇  数又みはる
携帯はへその緒なりぐらぐらと揺れている子と吾を結べり  吉川敬子
乳くさき雨に湿りし交差点に目瞑りて聞くくわくこうの音を  大河原陽子
小窓開けて逢いたき人を待つてゐる死なねば逢へぬ人は尚さら  大畑敏子
その昔こころ病む人住んでをり「天文学者」と皆に好かれし  古賀公子
ガチヤガチヤと全身装備鳴らしつつ米兵があゆむ果てなきイラク  助野貴美子
人ひとり生きてゆくのに様々な音たてること深夜の水流  芦田美香
庭にみる妻の足跡こんなにも小さかったか そっと掌のばす  明石森太
選ばれし短歌少なき月なれば同じ少なき人の歌読む  鈴木俊春
30を過ぎても母に弁当を作らせる女性と何を話すか  夏目空
側にゐてとどくことなき悲しみに爪を立てをり夏蜜柑むきつつ  安藤純代
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by 31life | 2007-07-18 21:17 | My Favorite  

My Favorite 塔6月号

作品1、作品2、若葉集から。

<GOLD Favorite>
逝く人のかたえに重ねる飲食の現し世にして茶碗の音す  川野久子
活力の生まれ自らを励ますとふ赤を勧めるあんたが嫌ひ  助野貴美子
透きとおるゴミの袋の内あらわ生きるは斯くも煩雑なりき  新倉由美子

<SILVER Favorite>
マスクして煩はしき人を遠ざける楽しさにをり会議に出で来て  上田善朗
赤ん坊は泣くものなので赤ん坊が泣いてもじろじろ見ないでください  荒井直子
男性歌人の歌集の中の子供らはいともやすやす育ちてゆきぬ  川本千栄
わが腕と妻の腕とは絡まって取り出されたり洗濯槽より  松村正直
たくさんの手首を拾い集めては捨つる夢みつ汗にまみれて  沼尾莉生
勝ち誇る顔にて紫煙を吹き掛ける将棋敵が朝早く来る  相沢大也
本当は困っていたのか背もたれに君が掛けおくジャケットずれて  荻原伸
ドアにゆびつめて抜けぬと泣いてゐた娘は三十六 まだ泣いてゐる  小松道子


<BRONZE Favorite>
牛よりも牛乳飲んでいる俺は今のところは人間である  相原かろ
顔面の皺は左右に打ち寄せてこのひとはこんなにかわいくなった  梶原さい子
まんぼうの夢を見ていた現身を湯に浮かべれば狭き海なり  紺屋四郎
褒めもせず貶しもせずにほおーほおーと我の一首を母は聞くなり  中野敏子
見上げゐる遺影にいつものこゑを聞く「私死んだか」博子さん嗚呼  西尾憲治
三日月が水たまりの中ふるへるを子が来て指の先につつきぬ  久岡貴子
見つめられ一緒のお墓に入ろうかと語れば犬は思案に入りぬ  樺澤ミワ
祈るときことば浮きたる心地してふと口つぐむことありて悲し  林一英
便箋の中程からは前文を繰り返すなり老母の手紙は  東郷悦子
病名をとうとう知りてしまいたる人を見舞えり黄のチューリップ  林田幸子
それぞれに特技はありて堅物の吾が同僚は折り紙を折る  八鍬友広
大福にひそむ苺が舌刺すに似たりあなたの「気にしないで」は  保村たまき
自在とはいかなる範囲せいいっぱい伸ばした指の先がつめたい  秋津霧
なまなまと流れて潤む鶏卵の殻を溶かれしのちのたゆたひ  澄田広枝
早朝にポストに入れし封筒はもうないだろうこの町の夜  中村ヨネ子
俺つて危篤なの?とふ弟の最後の声が耳底にあり  太田由美子
少年の背中に翼たたまれてそのまま退化してゆく あわれ  小川和恵
眠る父のどこにも強きものはなくわたしは何から逃げたのだろう  山梨寿子
父に梅母に桜の別れの日死も慈しみと思いていたり  飯塚律子
変はりなし変はりなしといふうちに年寄り顔になつてしまへり  山本大二郎
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by 31life | 2007-06-18 22:51 | My Favorite